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■ イエスの十字架

あの日、イエスより一足早く十字架を背負った男がいた。
背負ったというより無理矢理に運ばされた。
クレネ人シモン、たまたま遠い田舎からエルサレム詣でに来ていたユダヤ人だった。
何やら騒がしい人だかりに思わず首を突っ込んだところ、傍に居たローマ兵に見つかった。
「おい、お前、代わりに背負ってやれ!」と怒鳴られ、逃げる間もなく背負わされた。
十字架を背負って来た本人は既に力なく、息も絶え絶えだった。
ふと男を見れば背中といわず体中に鞭の痕があり、皮膚は裂け、肉は飛び出して見える。
あまりの惨さにシモンは男の十字架を肩に担いだ。

シモンにとって、それは最悪の日だった。
二人の幼い息子は心配そうにシモンを見上げている。
背に重く圧し掛かる十字架を引きずりながらシモンは何を思っただろう。
「こんな殺され方をする彼は、一体何をしでかしたのか?
もしかして幾人殺したのだろうか。
弱り果て、全身傷つけられてはいるが、どう見ても極悪人に思えない。」

囃し立てる群衆の顔を見ると、何か異様なものを感じた。
なぜ人々はこんなに興奮しているのだろう。
この男の死がそんなに嬉しいのだろうか?
刑場までの数十分、シモンの頭の中は自身の恥ずかしさと困惑と悔しさがごっちゃになって渦巻いていたのだろう。
とんでもない物を担がされた。
一生忘れられないであろう屈辱感に押し倒れそうにさえなった。

刑場についたシモンは十字架を置くと二人の息子の手を引っ張って、その場から走り去ったと思う。
後ろなど振り向く余裕はなかった。
顔から火が出る程恥ずかしい時間だった。
おそらく早々にエルサレムを後にし、クレネに飛んで帰ったであろうか。
だが、どうしても自分が担いだ「十字架の男の顔」が頭から離れない。
幾度思い出しても、どう考えても彼が極悪人とは思えなかった。

シモンの息子の名はアレキサンデルとルポス。
マルコ福音書はシモンの名と共に書き残している。
父の名は兎も角として、どうして息子の名まで残ったのだろう。

パウロが送ったローマびとへの手紙の最後。
キリストに仕えた大勢の名前が続々と並び、パウロの短い感謝は伝言となって名前のところに連ねられている。
16章13節、こうある。
「主にあって選ばれた人、ルポスによろしく。彼の母は、まるで私の母の様です。」

果たしてこのルポスはシモンの息子の名前だろうか?
そのことに関して聖書は断言していない。
だが、否定しきれない思いも残る。
「主にあって選ばれたルポス・・・」この言葉が妙に心にくすぶり続けた。
なにか聖書を読む人に判断を委ねている、ふとそう思った。
そして私はシモンの息子、ルポスと決めた。
これは神の摂理かも知れないと思った。

シモンは海を渡ってクレネからエルサレムに来たのであろう。
アフリカ大陸の北をなぞる様に地中海を横切って来た。
クレネには多くのユダヤ人(ディアスポラ=離散)達が暮らしている。
彼の妻は帰ってきた夫の口から報告に驚いたであろう。
しかし数か月後にはもっと驚愕する話が次々と飛び込んで来た。

シモンが背負った十字架の男はナザレのイエスという男。
そしてイエスは大勢のユダヤ人にメシヤとして慕われていた。
シモンが一番に驚いたこと、それはあの男が殺されて三日目によみがえったらしい、という情報。
「まさか・・・」夫婦は耳を疑った。
だが、忘れもしない男の顔が頭をよぎる度に、情報はシモンの内で真実味を増した。

それから十数年後、ルポスは滞在先のローマでキリスト者となった。
若しくはローマで暮らしていたのかも知れない。
ルポス自身の瞼から、あの日の出来事が消えることはなかった。
「父シモンはあの日、神に選ばれてイエスの十字架を背負った。私もこの人生でイエスの十字架を背負って生きて行こう。」
ルポスの生きざまにパウロは「主の選び」を見た。
「主によって選ばれたひと、ルポスに宜しく・・・」

私達の人生にもキリストの十字架がある。
それは私が、あなたが担ぐために、である。
多くの場合、十字架は無理矢理に担ぐように請われている。
だが、担ぐことも、断ることも私の選択次第だ。
キリストと生きたいと思うなら、担がねばならない。
これが主の十字架なのだから。
そのためにこそ、イエスは担ぐ力と思いと勇気と信仰を備えて下さったではないか。
「私は私を強くして下さる方によって、どんなことでも出来るのです。」ピリピ4:13

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