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■ こんな器・・・になりきれない私 / マルコの福音書8:34~38 (2005-08-21)

イエスはある日、弟子達と共にたくさんの人々、つまり群集を前にして語られた。それは「キリストの弟子」としての招きの言葉であった。『誰でもわたしについて来たいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。』(マルコ8:34)。

イエスは特定の人、つまり生涯を通して神に仕えるといった宣教師、牧師、伝道師だけに向けて言われたのではない。イエスの視線と言葉は、群集をも含めた不特定多数に向けて発せられたものであった。そこには「あなたがた一人一人は、すべてわたしの弟子として招かれている対象である。」と言う意味合いがあったと思う。群集であるから、主婦もいたであろうし、青年、子供も居た筈である。社会の底辺に置かれた人もいたであろう。どんな場所に生きていた人も、すべて招きの対象であることを覚えたい。

「自分を捨て」とあるが、このことほど難しいものはない、と思う。なにしろ、捨てたと思った次の瞬間、意識するのは、自分の中心に鎮座まします「自我」という王だからである。「人間は自我の虜」とさえ言える。仮に自我を取られたら、魂の抜け殻になるんじゃないか、とさえ思ってしまう。だが、イエスは「それを捨てよ」と言われた。勿論、主が仰るのだから、主イエスを最優先にすれば、自我を捨てられるのであろうが、捨てようとして、捨てられるものではないことは、多くのクリスチャンには体験済みであろう。私個人の勝手な考えだが、捨てよう、と意識するものではなく、「神と神の国を第一にする」ことが「自我からの開放」になるのであって、それ自体が「自我を捨てる」ということではないだろうか、と思う。そして、そのすべてが神のなされる神のわざなのである。

次に「自分の十字架を負うて」とある。イエスに付き従って生きるところに、様々な重荷が現れる。だがそれらは一般に言うところの、人生の十字架ではない。イエスにあって生きるが故に存在してくる重荷、苦しみ、悩み、壁、である。であるから、この十字架からは、逃げることも出来るし、負わずともいられる。だから十字架なのだ。負うも負わずも自分に選択権がある。悩み、迷う。だから十字架なのだ。イエスはそういうところで十字架を背負われた。呑めない盃を呑み干してくださった。たかが罪びとのために。神に逆らいとおす人間のために。自己中心にしか生きられない哀れで弱い人間のためにであった。

果たして、イエスの招きを本気で聴く人間はどれほどいるのだろう?この日本という恵まれた環境と暮らしの中で、渇ける魂はどれほどいるのだろう?だが、イエスが語り向かった先には、対象の中の一部として日本人も置かれていることは事実である。あなたはそれをどのように聞くだろう。私は40歳になったとき、神からの召しを聞いた。「あなたが必要だ!」というみ声であった。自分の40年間を振り返ったとき、神の大きな憐れみと祝福を見た。そして私は「一年でもいいから、主にお仕えさせていただきたい。」と決め、神学校へ入った。4年間の悶々とした時間に区切りをつけて。 考えてみれば、あのペテロだって平々凡々と漁師の人生で終われば、無残な殉教死をせずに済んだ。だが彼はキリストに従う道を選んだ。伝道に疲れ、ローマを後にし、故郷へ向かう帰路アッピア街道を歩むペテロに、復活のイエスが現れ、こう語られた。「わたしはもう一度ローマに行って、ローマの人々のために十字架にかかろうか?」。それを聞いたペテロは踵を返し、再び今来た道を戻って行ったと、「クオ・バディアス・ドミネ」は伝える。

「こんな私」になりきれない私、である。そこまで自分を落とせない私がある。どうしても、キリストだけにすがりきれない私がある。何故か?それは余りにも恵まれ過ぎているからだ。頼れる対象をたくさん背負っているから、十字架を背負うだけの余裕がないのである。または、恵み自体が神からのものである、と言う認識が薄すぎて、自分の努力の賜物と言う自覚が強すぎるのであろうか。落ちきれない私ゆえ、十字架から逃げられる。

人生のどん底、絶望の中でキリストに出会い、神に栄光を帰したクリスチャンは数多くある。彼らは、キリストにしか生きる活路を見出せなかった人たちであった。キリストの愛だけが、彼らの生きる希望であり、応答すべき対象であった。彼らは恵みのすべてが、神からのものである、という強い自覚があった。試練を与えたもう神は、試練と共に脱出と祝福をも備えたもう、のである。その試練の中にさえ神が住んでくださっていることを、彼らは知っていた。何と言う神の恩寵であり、摂理であろうか。不思議なる方は、不思議をもって、あなたに出会ってくださる。この方をおいて、人間が救われる道は、残念ながら他に無い!(使徒行伝4章12節)アーメン。

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