■ Young Rich Ruler / マタイ19:16~26

1978年のクリスチャンホーム・カレンダーのことは今も忘れない。 カレンダーの画はイエスを真ん中にして、左右両脇に二人の男性が描いてあった。 一人はリッチで綺麗な身なりをしている若者。 もう一人は貧しく年老いた人だった。 イエスが若者に何か語りかけており、老人を見やっているものだった。 「あなたの持ち物をすべて売り払い、貧しい人に分け与え、そのうえでわたしについて来なさい。」(マタイ19:21) そんな場面だった。 若者の目は困惑し、もの悲しそうに描かれていた。 それは非常にインパクトがあり、三人を見る私が現場の傍観者として、彼らを見ている思いだった。 「Young Rich Ruler」と画の下にタイトルがあった。 つまり「若い金持ちの支配者(直訳なら定規=理性、道徳律などの象徴)とでもとれるが、私は和訳せずに英語名で記憶した。 そのほうが彼をあるがまま表していると感じたから。 それは僅か数か月前に33歳で信仰を持ったばかりの私だった。 若者は自分の秤で自分を量り、彼の道徳性を評価し、それを基準にして生きていた。 寸分の狂いも認めず、律儀を自身に当て嵌め、自らの誇りにしていたのであろうか。 何不自由ない人生で、「間違いを犯さない」ことが彼の看板だったのであろう。 十戒は端から端まで暗記し、ひとり悦に入っていたのかも知れない。 彼がイエスの前に進み出たのは、そんな自信に満ちた日々の中だった。 「先生、永遠のいのちを得るためには、どんな良いことをしたらよいのでしょう?」 そんな言葉を言える程に、我が身と生き方に満足していたのか。 イエスは彼をじっと見つめると言われた。 「なぜ良いことについて尋ねるのか。良い方はひとりだけです。もし、いのちに入りたいと思うなら、戒めを守りなさい。」 イエスが彼に理解して欲しかったことは「良いこと」ではなく、「良い方(神)を求めなさい」のことだった。 不遜にも青年はイエスに訊いた。「どの戒めですか?」 「殺してはならない。姦淫してはならない。盗んではならない。偽証してはならない。」 青年は心の中で笑みを浮かべたか、若しくはムカついたか。 (そんなことは常に守っているのに。「してはならない」など、私にとって、朝飯前なのに。) イエスの言葉は続いた。「そして父と母を敬いなさい。あなたの隣人を、自分自身を愛する様に愛しなさい。」 この言葉を彼はどう聞いたのだろう。 そして、青年は言い放った。 「その様なことは、すべて守っております。何かまだ欠けているのでしょうか?」 イエスは青年の目を見ながらいわれた。 「では、あなたの持ち物をすべて売り払い、貧しい人達に分け与え、その上でわたしに従ってきなさい。」 青年は聞いた。 主の言葉を噛み締めた。 そして、悲しげな表情で去って行った。 イエスは弟子達の顔を見ながらいわれた。 「金持ちが神の国に入ることは、なんと難しいことか。駱駝が針の穴を通る方がより易しい。」 ペテロが口を開いた。「先生、それではいったい、誰が救われるのですか?」 主は答えた。 「それは・・人には出来ない。だが、神にはどんなことでも出来るのです。」 人には出来ない。 つまり人間は己が罪を、己が力で清算して、神の国のドアは開けられないのである。 人間はそれに関して全くの無力である。 自分では何一つ出来ないことを悟り、神の憐れみにすがりつくしかないのである。 罪は神に対して貯めた負債である。 その負債は、人間の努力で埋め合わせすることは不可能である。 キリストの十字架を信じて、我が罪の贖罪と信じて受け入れるのみである。 其処において、人は己がプライドを剥ぎ取らねばならない。 辛く、苦しい時間に向かい合わねばならない。 しかし、キリストを受け入れるとは、そういうことである。 私は33歳まで誰に対しても謝ったことなど一度もなかった。 あらためて、それを自覚させられる時が来た。 家内に対しても同様であった。 しかし、イエスを信じて受け入れた私の数か月後、家内はあきらかに以前とは違う態度をとった。 彼女は謝って来ないのである。 それは当然なことだった。 だが、私も謝らなかった。 原因はあきらかに私であった。 幾日か経ったが状況は変わらない。 そんな或る日、カレンダーのイエスを眺めていた。 イエスを想い、イエスの言葉を聞く青年、そして悲しげに眼を落す青年を見つめていた。 ふと思った。 誰かに謝れなくても、イエスであるなら謝れるな・・・ しばらく考えて、そして決心した。 イエスに謝ろう。 イエスに向かって「ごめんなさい。」と言おう。 そしてイエスに言う積りで、家内の顔を見て言った。 「俺が悪かった。」 おかげでイエスの前から悲しげに去らずに済んだ。 38年前のカレンダー、イエスの御顔はいつも心にある。

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