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■ ここも神の国

「ここも神の御国なれば」とい讃美歌がある。 讃美歌というものは、メロディ以上に歌詞の内容が大切である。 メロディは歌詞の内容に添って、書かれるものだと思う。 悲しい歌詞、試練の只中に置かれた人生の詩、希望に向かう歌詞、感謝に満ち溢れる心、歌詞次第でメロディは変わる。 この讃美歌の1番と2番は見慣れた様な景色さえも、神を見る目と心があれば、当たり前に思えない主の御手を感じてしまうと、書かれた抒情詩であると思った。 「降る雨も、鳥のさえずり、花の香、朝陽、夕陽も創造主からの温かな贈り物であり、そよ吹く風さえ神を語る・・・」 こういう心をいつも持ち続けられたら、どんなにいいだろうか、と思わざるを得ない。 3番の歌詞、一転現実に戻されたかの様な感じがするが実はそうではない。 自然界が奏でる美しく優しい囁きの後に、人間の愚かさ醜さが歌の中に書き込まれている。 「ここも神のみくになれば、邪(よこしま)暫しは時を得ても、主の御旨の稍(やや)になりて、天地(あめつち)遂には、一つとならん。」 (邪悪(罪)がしばらくの間この世を席捲したかに見えても、しばしの時過ぎれば神の御旨が事を為す、とある。) 「此処も神の御国なれば」というところは、実にこの地上である。 イエスが御降誕為し給うた故に、此処も神の御国なれば、である。 それ以外の理由など絶対に皆無である。 天の御国は・・・という書き出しで始まる「ぶどう園オーナー」の例話がある。 ぶどう園の話ではなく、オーナーの話である。 ぶどう園の主人は早朝から労務者を雇いに出かけた。 市場にたむろしていた人々にこう言った。 「一日デナリ支払うから、夕方まで働いてくれないか。」男たちは勇んで農場に出掛けた。 主人が朝9時ころ、同じ場所に行ってみると、男たちは所在無げに集まっていた。 「あなた方にも相当な物をあげるから、働いてくれないか。」 主人は12時ごろ、3時ごろにも同じように人雇いに足を運んだ。 そして5時ごろ行ってみると、更に男たちはいた。 何故、一日中仕事をしないのか、と言うと、「誰も雇ってくれないから」と答えた。 「では、あなた方も農場に行って働きなさい」 間もなく、陽が落ちて労働報酬の支払いが始まった。 主人は召使に言った。「後から来た者から順に、1デナリずつ渡しなさい。」 早朝から働いた男たちは、それを見ていて心で呟いたであろう。 「おぅ、午後から働いたあいつらが1デナリなら俺たちは一体幾デナリ貰えるだろう?」 ところがオーナーは彼等にも1デナリを支払った。 途端、男たちは主人に文句をつけた。 「この連中は午後、いや夕方から来て、ろくすっぽ働かなかったのに1デナリも貰った。 なんで俺たちも1デナリなんだ?」 主人曰く、「私はあなたと一日1デナリの約束をした。そしてそれを支払った。私があまりに気前がいいので、気に障ったのか?私のものをどう使おうと誰に文句を言われる筋合いなど無い。」 この話を読んで「なるほど・・」と思う自分と、何となく合点が行かない自分がいるのは、果たして私だけだろうか。 ここに「私は一番忠実に働いた」「一番長く働いた」「一番努力した」「一番苦労した」という自負が内にあることを認めざるを得ない。 神の国は、この世の報酬倫理、賃金体系、労働のモラルに関する認識や価値観など一切通用しないことを教えられる。 つまり、私たちは真面目な人ほど損してしまうのか・・・という短絡的解釈を持ってしまうのは、どこかで自分を過大評価しているからだろうか。 しかし、ことは「天のみ国の主人」を描いた例え話である。 つまり労働云々ではなく罪の赦しに対する、神の寛容の度合いと深さを指している。 自分は「早朝男」と思うか、「5時から男」と思うかは各人の勝手だが、ことは一人一人の罪の自覚と認識はどうなのか、である。 赦されようが無いと思うほどに、自己の罪の重大さを見つめているか? キリストの十字架以外に救われようがないと思っているか? 何も自分だけじゃないとわきに押しやってしまうのか? ここにキリストを見上げる態度、姿勢、普段の生き方が浮き上がってくる。 「ここも神の御国なれば、よこしま暫しは時を得とも、主の御旨のややになりて」 教会は神の国ではない。 キリスト者だからすべて聖徒だと言い切れない。 牧師とて何さまでもない。 「人とは何ものでしょう。あなたがこれを心に留められるとは。」と詩篇の記者は呟いた。 神がこの地に降りて下さらなかったら、クリスチャンなど一人も存在しない。 主が人間の救いに熱心になられて、御身を十字架に捧げて下さったので、人は贖われた。 キリストが気前良過ぎたおかげで、私の様な者でさえ、5時から男なのに、1デナリに与った。

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